2024.01.26

ブランドの「挑戦」に、勇気をもたらす共創を。

山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

ブランドの「挑戦」に、勇気をもたらす共創を。

多くの企業やブランドが「挑戦」する時代

2024年が始まり、多くの企業から発表された年頭所感や経営方針。テクノロジーの進歩や人材不足、世界情勢の影響など、経営環境が急激に変化を続け、イノベーションが企業活動にとって生命線となる中、「挑戦」という言葉を多く見聞きしました。

現代社会の加速度的な変化は、企業やブランドが提供するサービスが進化することで利用者の価値観を変化させ、またそれに合わせてサービスが変化していくというスパイラルによって生み出されており、今後もさらに加速すると考えられます。その変化に対応し、新しい顧客価値を常に開発していくためには「挑戦」が欠かせないということでしょう。

そして挑戦には多くのトライ&エラーが伴います。目の前の効果や効率性は経営として無視はできませんが、挑戦する組織 体質にするためには、中長期的な視点で組織マネジメントの仕組みを整えていく必要があります。

近年ではそういった課題に対応する、組織マネジメントやブランディングについてのサービスプログラムが数多くリリースされており、検索すれば様々な情報にヒットします。企業がヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源の最適化を図るために、自社の経験値だけに頼るのではなく、外部サービスの積極的活用を決断することが増えています。

弊社にもコーポレートや事業ブランディングのご相談をいただきますが、私たちのような外部の専門機関のプログラムを採用するのが初めてという場合も少なくありません。それはその企業にとってまさに大きな挑戦であり、私たちがその貴重な機会に立ち会わせていただいていると思うと、いつも身が引き締まります。


情報化が進み、プロジェクトが画一的になるという側面も

その「ブランディング」は、これまでは、ブランドのあらゆる活動から感じられる「イメージの一貫性を保つこと」が、導入の主な目的とされてきました。もちろん、目的や価値基準などは実施する企業によって捉え方が違ってくると思いますが、その実装についてもイメージ醸成に大きく関係するアウターコミュニケーションを中心に設計されてきたと思います。

多くの有益な情報に容易にアクセスできる現代では、様々なビジネスシーンでブランディングプログラムが実施されており、「ブランディング」は誰もが使用する一般的な言葉になっています。すなわち、ブランディングの概念や進め方などについても、ビジネスパーソンであればある程度の知識を持っているのが現状だと思います。

ブランディングの導入検討時に各社のサービスを調査されると思いますが、その際にご担当の方は「各社、あまり差がないなあ」と感じることはないでしょうか?ブランディングを提供する事業者によって経験値や得意領域に差はあるものの、大まかなフローや重要ポイントはマーケティングのセオリーなどと同様に、実は大きな差はありません。

ブランディングにおいて重要なのは、企業やブランドの個性を最大限に引き出し、ブランドに対するステークホルダーの共感を生み出すことだと考えますが、各社同じようなプログラムなのですから、効果的に運用しなければ、結果的に判で押したような画一的なブランドを生み出してしまう可能性があります。


ブランド運営は「管理型」から「活性型」へ

生成AIなどの技術進化は、私たちのビジネスや生活に大きなインパクトを与えています。そして私たちは「人間らしさや個性とは何か」を改めて考えさせられています。これだけ浸透してきたブランディングも、過渡期にあると言えるでしょう。これまでのブランディングを、「イメージの一貫性を保つこと」を目的とした「アウターコミュニケーション主体」に考える「管理型」運営と捉えるなら、もう立ち行かなくなるかもしれません。

最近の弊社へのご相談傾向として、企業や事業ブランドの社内浸透を目的とした「インナーブランディング」に関するテーマが多くなっている、と以前のコラムでも書きましたが、これはブランディングプログラム導入後に、ブランド運営が効果的に自走することが重要という認識が強くなってきているからでしょう。

自社が保有するブランドの価値は、顧客がそれを実感することで初めて価値となりますが、価値を作り出すのはブランドを保有する企業側であり、社員の皆さんです。社内メンバーがブランドのパーパスを「自分事」として認識し、各部署で理想とする行動に落とし込むことで、ブランドの活動はイキイキとしたものになると考えられます。

これからのブランド運営は、セオリーに基づいて「こうあるべき」を管理するのではなく、「こうなりたい」という「さらなる価値創出」を目的とした「ブランドや組織の成長を主体」に考える「活性型」運営が必要ではないでしょうか。


ブランドの挑戦を支えるために、私たちも挑戦する

「こうすれば成功する」という型に当てはめるだけで上手くいけば効率的なのですが、そもそもブランドが置かれている状況や企業の事情などはそれぞれ違うため、必ずと言っていいほど、弊社ではメニュー設計は常に状況に合わせてカスタマイズしますし、進行中にプログラムを調整することも多々あります。ましてや、これまでにない課題に挑戦するのであればなおさら、既存のセオリーは通用しにくいでしょう。

TCDにもこれまでの経験によって培ってきたセオリーや型があり、その実効性には自信を持っています。しかし企業やブランドが様々な課題に向き合い挑戦をする今、そこに寄り添う私たちも、これまでのやり方にとらわれず挑戦をすることが必要だと考えています。クライアントの挑戦は私たちTCDにとっても挑戦なのです。そんな想いから私たちの今期の方針にも「挑戦」という言葉を掲げています。そしてどうせなら、とことん「楽しんで挑戦しよう」と言っています。

楽しむことで幸福度が増し、パフォーマンスが上がると言われます。私たち自身のパフォーマンスを最大化させるために、またTCDとの共創が「楽しい」と思っていただくことで、プロジェクトチームのパフォーマンスを上げることに寄与するためにも、TCDはこれからも楽しんで挑戦を続けていきたいと思います。そして、皆さまのブランドが自信と勇気を持って挑戦していけるような、個性的で魅力的なコンセプトやデザインを一緒に作っていきたいと思います。

[筆者プロフィール]

山崎 晴司

株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。

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