2018.08.03

地域商品のパッケージデザイン
「買いたくなるお土産」に必要なパッケージデザインとは?

山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

「買いたくなるお土産」に必要なパッケージデザインとは?
あと2年に迫った2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催。外国からの訪問者や国内の観戦客も含めた大きな観光需要に対する動きが活性化していると思います。中でもお土産市場は東京周辺の主要な交通機関の駅や空港を中心に、売り場の増設や整備が急ピッチで進められています。

ここ数年外国人観光客も増加傾向で、インバウンド需要のインパクトが大きな話題となって久しいですが、国内観光マーケットも非常に大きく、そのうちお土産市場は3兆円弱と言われています。中でも、菓子の占める割合は約35%と最も構成比が高い。また近年、菓子ギフトの利用シーンが変化し、季節の挨拶や社用での儀礼ギフトという昔からの習慣から、よりパーソナルでデイリーになってきていることも、この市場を拡大させている大きな要因の一つと言えます。今後の菓子業界は、引き続き拡大傾向にありオリンピック需要でピークを迎えるであろうこのお土産市場を捉えることが、最も重要なポイントになることは容易に想像出来ます。

では、旅行や出張移動の顧客が買いたくなるお土産商品とはどんなものでしょうか。またどのようなデザインであれば手に取ってもらえるのでしょうか。これまで様々に市場を観察し、また実際にパッケージデザイン開発に携わった経験から、3つのポイントを挙げてみました。

1.圧倒的な「看板」のチカラ

圧倒的な「看板」のチカラ

各地域で長年選ばれてきた代表格のブランドのことで、皆さんにも「○○(地域)と言ったら○○(銘柄)」を、いくつか思い出すことができるはずです。それと同時に商品のパッケージデザインも思い出すことでしょう。当たり前なのですがやはりこういった存在は強いです。

商品としてはそのカテゴリーの起源的存在であることが他者との圧倒的な差別化であり、あまり詳しい情報を持ち合わせていない観光客でも、「創業○○年」や「総本店」などの謳い文句が店舗やパッケージに書かれていれば、歴史が信頼となり安心して購入しようと考えます。そういった商品では、パッケージデザインは日本の伝統的な包装方法がそのまま、またはそれらをイメージした趣のあるデザインが多い傾向で、その会社や商品の歴史を利用客に伝えようとしています。

2.他にはない「コンセプト」の体現

他にはない「コンセプト」の体現

名産品や地域文化をモチーフにしたその土地ならではの納得感がある商品は、利用客にとっては大変魅力的です。ただ、地域のお土産というと他者と同じ商品性のものが数多く並びがち。そうなると当然選ばれる確率も低くなります。利用客が買いたくなる新商品を開発するには、まずは地域を意識しつつもオリジナリティのある特徴や製法など、思わず人に話したくなるコンセプトを考えるべきでしょう。例えば、納得(地域性)と意外性(新しさやズラし)の掛け合わせは大変効果的だと思います。よく知っているお菓子が意外な形になっているとか、地域の素材をこれまでにないユニークな活かし方で商品にするなど。

そしてせっかくユニークな商品ができても、それを伝えるデザインが平凡では利用客には届きません。現存する商品でも良いものなのになかなか支持されないという商品があると思いますが、それはデザインの問題かもしれません。手に取ってもらうにはデザインにも納得×意外性が必要です。最近では皆さんご承知の「インスタ映え」。旅というのは「特別な体験」であり、お土産購入もその体験の一つですので、商品の形やパッケージデザインを工夫し、その特別性や意外性ゆえに写真映えし拡散されることを意識した商品も数多く出てきています。

3.分かりやすくて適度にお洒落な「安心感」

分かりやすくて適度にお洒落な「安心感」

駅や空港などのお土産購入者の多くは、仕事で全国を飛び回るビジネスマンの利用だと言われています。特に女性より男性の方が駅や空港で購入する割合が高い傾向にあります。お土産を選ぶのにゆっくり時間を割くことが難しいビジネスマンに対しては、(1)ぱっと見て判りやすいこと、(2)男性が手に取りにくいデザインや色彩でないこと、(3)手軽に持ち運べる形態であること、(4)適度な上質感とお洒落感、などのデザインアプローチが必要と考えられます。特に判りやすさは重要で、中身がイメージしやすいデザインの工夫とともに、ブランドや商品のネーミングも大変重要な要素と言えます。同じような商品でもネーミングによって消費者に対して大きなアドバンテージを得る場合が少なくありません。

とはいえ単に判りやすければどんなデザインでもいいわけではなく、購入する際にはお土産を受け取る側の反応も気になるところなので、そこにはある程度の「上質感」や「今っぽさ」が必要となります。ただ余りにそれが尖りすぎては選択の際にハードルが上がり敬遠されることもあります。この市場では保守的と考えられる男性ターゲットには、個性を出しつつも様々なバランスを考慮することが鍵になります。デザイン的に目立てばそれで良いということではなく、お土産として遜色ないクオリティー感、そして、これを買えば間違いないという「安心感」が、選ぶ側の判断に大きく作用するのではないでしょうか。

TCDでもこれまでに様々な地域のお土産や名産品のクリエイティブ支援を行ないました。
各地域の事例を以下にいくつかご紹介します。これらの他にも、京都や奈良、鹿児島などの地域からご相談をいただき、現在も様々なプロジェクトが進行中です。

TCDの地域×デザイン事例

■名古屋銘菓
豆福
TCD事例紹介
■石川の米
ひゃくまん穀

[筆者プロフィール]

山崎 晴司

株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。

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