2019.12.26
THINK ABOUT ”DESIGN”
ヒトの健康は「血の巡り」、ブランドの健康は「知の巡り」
山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター
2019年も残すところあと僅かになりました。今年も例年のようにインフルエンザや風邪が流行しているようで、寝込まず健康に年を越せるように何かと注意が必要な時期です。私が子供の頃は冬になると風邪をひかないようにと、タオルで体を擦る「乾布摩擦」をやっていた記憶があります(今はあまり見ませんね…)。様々な効果が期待できるらしいのですが、血行促進が主な目的だったと思います。そしてヒトの健康で重要なのはこの「血行」と言われています。ふと、「ヒト」の健康と「ブランド」の健康、そしてそれぞれを維持する為の活動には多くの共通点があるのではと考えてみました。
国が最近行った健康に関する意識調査によると、80%以上の国民に自分の健康状態に関して「ふつう」「まあよい」「よい」という認識があり、多くの人が健康に関して大きな課題が無いと考えていることがわかります。一方で健康に対する不安については、60%以上の人が「ある」と答えています。そして今後の為に気をつけたいことは「食事や栄養について」が一番多く、「睡眠や休養」「運動」「定期検診」などが続きます。
ではブランドはどうか。おそらく、大きな課題認識を持つブランドよりも、「現状は健康状態を保っている」と考えられているブランドの方が、圧倒的に多く存在するのではないでしょうか。しかし今後に対して不安が無いかと問われれば、何かしらの課題を認識しているはずです。ただ、現状は健康(順調)なのでその先の不安はなかなか直視されず対応も後回しになることが多く、放っておくと後に大きな問題になることもしばしば。私自身の健康管理を棚に上げて敢えて申し上げれば…、やはりヒトの健康もブランドの健康も課題が小さいうちに対処すること、そして不安を現実にしない為の日頃のケアやメンテナンスが必要ということです。
ヒトの体内に隅々まで張り巡らされた血管は、酸素や栄養素を全身に届けることと、二酸化炭素や老廃物を回収するという、大変重要な役割を担っています。このことがベースとなって健康な体が維持されています。「血の巡り」が滞れば様々な病気が引き起こされることはご周知のとおり。そして、健全なブランドを維持する為に必要なのは「知の巡り」。ブランド側が伝えたい価値を明確な情報(=知)にして、顧客に滞りなく届けることが重要です。ブランディングはまさにこの活動のことです。
そう書くと至極当たり前に思えるのですが、最近の弊社へのご相談の中でも、商品開発時のコンセプトがプロモーションフェーズで踏襲されず一貫性が感じられるものになっていない、または、広告するものの肝心のブランド価値について社内で整理されていない為に、メディアによって訴求イメージに統一性がない等、ブランドに関わるメンバー間で「知の巡り」が滞っていて上手くいっていないことが多くあるようです。また、ブランド価値が顧客に効果的に伝わっていない、ブランド側が考えるものとは異なったネガティブなブランドイメージを顧客が持つようになっていた等、定期的に健康状態をチェックしメンテナンスをしてこなかった為に起こる、ブランドと顧客間での滞りもあります。
「血の巡り」はヒトの健康の源。そして「血の巡り」が良く健康であることがヒトに勇気を与え、生きる自信となるように、円滑な「知の巡り」は、ブランドに勇気を与え、自信のある事業活動を促します。
私たちは、「知の巡り」を良くするブランディングサービスを提供出来るよう、来年も自らの組織体質を健全な状態に保つべく「知の巡り」の促進に努めたいと思います。
[筆者プロフィール]
山崎 晴司
株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター
日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。