2023.09.25

ネーミングとトレンドの関係性と発想法

由良 綾子 株式会社TCD コピーディレクター

ネーミングとトレンドの関係性と発想法

ネーミングを新たに制作する際、どの程度トレンドを意識すれば良いのか、また最近の流行は?とご質問をいただくことがあります。一般的な事例とともに紐解いていきたいと思います。


象徴的なネーミングから見えてくるトレンドの変化

新しいランドマークとして話題にのぼる機会も多い大型施設は、トレンドの影響を受けやすいネーミングの一つ。近年は「ゲートウェイ成田」「ブルーフロント芝浦」「グラングリーン大阪」など、コンセプトやセールスポイントを明確に表現した、シンプルでストレートな英語を用いた名前が目立ちます。

それ以前の「六本木ヒルズ」「西宮ガーデンズ」など漠然としたイメージの名や、「渋谷ヒカリエ」「東京ソラマチ」「あべのハルカス」といった日本語由来の造語と比較すると、具体性、わかりやすさが際立ちます。その背景には、多様性意識の高まりがあると分析しています。またネットや地図アプリでの検索が一般化し、覚えやすさ、入力・登録しやすさが求められることも、こうしたネーミングが増加した理由の一つでしょう。



近年の世界的な潮流であるSDGsや地域共生と関連したネーミングの事例としては、大阪・北加賀屋でサステナビリティやパーマカルチャーを体感できる「スマセル サステナブルコミューン」、三重県多気町に広がるホテル、マルシェなどの複合施設で「美村」から命名された「VISON(ヴィソン)」を挙げたいと思います。

一方、美容分野で近年注目されているブランドでは、「SHIRO(シロ)」「UKA(ウカ)」「OSAJI(オサジ)」など、明確な意味とインパクトを持つ日本語の言葉をそのままアルファベット表記したネーミングが多く見られます。ブランドコンセプトからも、原料へのこだわり、産地との結びつきといった、原点回帰の影響がうかがえます。

いずれも情報過多が叫ばれる中で、ネーミングにブランド独自のコンセプト、ストーリーを反映している点、SNSなどを高頻度で更新しながらしっかりと発信している点が特徴的です。


使われ方によって異なる、トレンドの関連度

ネーミングは、使用する期間や目的によって、時代性をどの程度取り入れるかが変わってきます。特に会社名、長期の定番化をめざすブランド名や商品名、サービス名では、トレンドをまったく無視するのも時代錯誤になりかねませんが、長期使用に耐えられる普遍的なネーミングが必要となります。一方、利用期間が短いブランドやキャンペーンであれば、トレンドを念頭に置くべきでしょう。以前の記事『新事業・新製品担当者が知っておきたい「ネーミング」開発のポイント』でご説明した基本要件をチェックしながら、ネーミング開発を進めるのがおすすめです。


ネーミングの発想法

私たちTCDで普段ネーミングを案出する際の発想法を、TCDのネーミング事例を活用してご紹介します。実際にはいくつかの方法を組み合わせて検討しますが、ネーミング依頼時のオリエンテーションや、候補案決定の際のヒントになれば幸いです。


1.ブランドコンセプト型
ブランドのコンセプト、提供価値を全面的に訴求したネーミング。



2.エヴィデンス型
ブランドが持つ機能的な差別優位性、スペックを伝えるネーミング。



3.サウンド&フィール型
発音、響きといった情緒的な要素を重視したネーミング。



4.アンデンティ&フィロソフィー型
企業・ブランドのアイデンティティ、理念・ビジョン、ストーリーを表現したネーミング。


どの発想法が最適かは、開発するブランドが何を目標とするのか、自社のなかでどういう位置づけなのかによって変わってきます。ネーミングを用い提供する人にとっても、受け取る人にとっても有益で理想的なブランドとなるよう、TCDはこれからもコミュニケーションを重ねながら、ネーミング、ブランディングのお手伝いをしていきたいと思います。


[筆者プロフィール]

由良 綾子

株式会社TCD コピーディレクター

紙媒体からWebやムービーのライティング、ネーミング、コンセプト立案まで、TCDのコピーライティングを幅広く担当。二級知的財産管理技能士。趣味は国内外を問わず、旅行と街歩き、食べ歩き。

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