2017.12.22

デザインの現場を考える
“30,000分の1の出会い”を偶然でなく必然に

山崎 晴司 株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

デザインの現場を考える

12月も終盤となり年末の慌ただしさが本格的ではありますが、少し2017年を振り返ると今年も様々な企業の皆様から、新しいお取り引きのお問い合わせやご相談をいただきました。その業種や依頼内容は本当に様々であり、デザインに対する社会的な期待の広がりを一層実感すると共に、数あるデザイン会社の中から我が社を見つけていただいたのですから、大変嬉しくありがたいと思います。

平成26年度の経産省データによると、日本全国のデザイン会社の数は約7,900とのこと。そして30,000超の人々がデザイン業に携わっているようです。言い方を変えれば、クライアントがひとつのデザイン会社に巡り会う確率は7,900分の1。また、ひとりのデザイナーがその仕事に携わるのは30,000分の1となります。そう考えるとこのひとつひとつの出会いは、改めて非常に貴重なものと感じます。しかしながら、この貴重な機会をうまく活かせないケースも見受けられます。

デザイナーとの出会いがうまくいかないのは?

外部のデザイナーに依頼するならば、せっかくなのでデザイナーの能力を最大限に活用したい。クライアントならそう考えるはずです。デザイナーとしても是非活用していただきたい。それがそれぞれの気持ちだと思いますが、クライアントとの会話の中でしばしば聞かれるのは「デザインのことはよく判らないので、デザイナーへの依頼(オリエン)の仕方が難しい」「なぜ依頼通りのデザインが上がってこないのか」などの、デザイン開発の現場における悩みや疑問の声。そのように現場の関係性がうまく機能していない状況は少なくないのかも知れません。

私は常に、クライアントとデザイナーは「チーム」であり、立場に関わらずひとつの目標に向かって協力し合う「チームメンバー」であるべきと考えています。それはスポーツ競技のチームのようなもの。例えば野球なら、まず試合に勝つことが目標。その為にチームの戦略があり、メンバーにはそれぞれにポジションや役割があります。皆がピッチャーでは試合ができませんね。良い結果を得る為にはチームワーク(恊働作業)が非常に重要ということです。プロジェクトがうまくいかない要因の多くは、この点が理解されていないことによると考えられます。

私はスタッフには、「一番肝心なのは提案時ではなくオリエン時の会話」と言っています。聞いて帰ってくるだけなら出向く必要がない。デザイナーから質問を投げかけたりこれまで経験した事例などを話すことによって、進める方向性がその場で見えてくる場合も少なくありません。また、進捗のやりとりはメールで済ますのではなく、可能な限り直接話すよう指導しています。その方が最終的には効率的に進むと確信しているからです。業務とは言え結局は人と人の繋がりです。感情は文面だけでは伝わりにくく勘違いなども起こりがち。また進捗中のテーマの方針がクライアント社内で変更されることもあると思いますが、顔を合わせていればそれを随時共有できます。なるべく多くデザイナーと意見交換をし、考えや認識のズレを調整する機会を作っていただきたいと思います。

「必然」として巡り会い、長くパートナー関係を続けていくために

クライアントは自社のプロジェクトやその周辺事情などに対して多くの経験や情報を持っています。一方デザイナー側はデザインが効果的に機能する為の知識や様々な企業の業務経験があります。それを掛け合わせて、チームの「可能性」が大きく広がるのではないでしょうか。そして十分なコミュニケーションをとることで、チームが目指す方向性が明確になってくるでしょう。私は、クライアントには色々と反応や意見を遠慮なく言ってもらうようにしています。その意見に対して「う〜ん・・」と頭を抱えることもありますが、気がつかなかった視点に刺激され、また違ったアイデアが誘発されることも多い。社内でも若いスタッフに私のデザインを見てもらって意見を求めたりします。デザインとは「コミュニケーションの為の手段」ですから、伝えたいことが伝わらなければ機能していないということ。感性や意見の相違があって当たり前で、それを出来る限りフラットな関係性の中で議論し、目標に照準を合わせてメンバー全員がシンクロ出来る所まで持っていって初めて、チームは効果的に機能し、プロジェクトは力強く前に進み出すのだと思います。

クライアント側にしてみれば、7,900ものデザイン会社の中から、自社の課題にぴったりのパートナーを見つけ出さないといけないのですから、大変苦労をされているのではないかと思います。この出会いが「偶然」で一過性のものに終わるのではなく、「必然」として巡り会い、長くパートナー関係が続けられるよう、今後も私達の経験やサービスそして信念を、明快な形で情報発信していきたいと思います。

デザインの現場を考える

[筆者プロフィール]

山崎 晴司

株式会社TCD 代表取締役社長 クリエイティブディレクター

日用品や医薬品、化粧品、食品などの様々なパッケージデザイン開発を中心に、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン等、マーケティング思考を前提にしたクリエイティブワークに幅広く携わる。また百貨店等における新ブランドの立ち上げに際しての戦略立案や商品パッケージから店頭ツール類、店舗までトータルデザインプロデュースも行う。

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