2021.12.17

BtoB企業のブランディング【第一回】
経営に“デザイン”を取り入れる

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブ・ディレクター


■デザインは経営の武器になる。

社内に「自信」を与え、社外に「共感」を生む、デザイン経営。

当コラムでは、あらゆる市場で競争が激化し、また経営環境がきわめて予測困難な状況に直面している中、これまでの延長では難しい、または新しい挑戦が必要になった、そんな場面で「デザイン」や「ブランド」が重要だと感じられた方々にとって有益となる情報をお送りできればと思います。

主にBtoB企業、ベンチャー企業における「デザイン経営」の観点で、どのように「デザイン」や「ブランディング」を経営に取り込んでいけるか。またBtoC事業や新規事業の立ち上げにおいても企業ブランディングの参考にしていければ幸いです。

以下の関連コラムもご参照ください



■「デザイン経営」とは?


一般的に「デザイン経営」には

 ・イノベーションを生み出す手法としての「デザイン思考」
 ・経営資産としての「ブランド価値」の構築、マネジメント

大きく二つの側面があります。こちらのコラムでは後者の「ブランド価値」について見ていきます。

昨今では「デザイン思考」についての関心も高まっていますので、「ブランド価値」との違いを整理するため、簡単におさらいをしたいと思います。

現在、様々な組織で導入、または導入が検討されている「デザイン思考」は、2000年代初頭、ポスト論理思考として米国のデザイン・ファームIDEOが主導し、教育現場ではスタンフォード大学のd.schoolが非デザイナーのためのデザイン教育として推し進めてきた問題解決手法です。

日本でも、そのプロセスである「ペルソナ/シナリオ法」や「カスタマージャーニーマップ」「プロトタイピング」などの言葉が一般化しつつあります。
それらの手法はIDEO以前から研究されていたもので、「企業経営とデザイン」を研究テーマにされている森永氏の著書『デザイン、アート、イノベーション(*1)』では、その歴史的系譜が整理されています。


デザイン思考はもともと、建築や都市計画、土木、政策立案などの分野で取り扱われてきた。なぜなら、それらの分野は対立する利害関係者が多く、複雑で、不安定な問題を取り扱うことが多いからである。しかし、IDEOは、それを当時、徐々に複雑化しつつあったプロダクトデザインの世界に持ち込んだのである。


現在では、プロダクトデザイン、製品開発だけでなく、サービス開発、社会課題の解決、組織改革、DX、様々な問題解決に取り入れられようとしています。
「デザイン思考」が比較的現場に近い製品開発やサービス開発のプロセスだとすると、それらの事業や組織の活動を下支えするのが「ブランド価値」であると、位置づけておきたいと思います。


冒頭で申し上げたとおり、あらゆる市場で競争が激化しています。製品やサービスによる差別化が難しくなった背景として、機能性の同質化が挙げられます。最近は、ソリューション(問題解決)も標準化、陳腐化していると言われています。
別の言い方をすると、顧客から見て、各社の製品、サービスの違いがわからない、という状態があらゆる市場で起こっています。そこで重要な役割を果たすのが「ブランド」になります。



■経営における「デザイン」の重要性


では、ブランドとは何か?
同氏の『経営学者が書いた デザインマネジメントの教科書(*2)』では、以下のように紹介されています。


・To See Is to Believe(百聞は一見にしかず)

 「ブランドとは、とどのつまりイメージである」
   ↓
 「イメージの大半は視覚情報によって形成される」
   ↓
 「デザインはその視覚情報である」


上記の論法に従うと、ブランドはイメージであり、短絡的な言い方をしてしまうとブランディングとはイメージづくりということになります。

昔は「ブランド」というと、シャネルやヴィトンなどハイエンドなラグジュアリー・ブランドが想起され、ビジネス界では見過ごされがちな要素でした。しかし高度経済成長期を通して、コカコーラなどの飲料品メーカー、P&Gなどの日用品メーカー、ソニーやナイキ、IBMやインテルなど、BtoB、BtoCを問わず、あらゆる業種で「ブランド」の重要性が確認され、今では経営における共通の課題となっています。

では現代的な「ブランド/ブランディング」とは何でしょうか?
先にも、差別化が難しくなった同質化時代という時代背景に触れました。しかし、機能面で差別化できないからイメージで差別化する、という理解は短絡的すぎるでしょう。

再度、前述の書籍より引用します。


ブランドとは、顧客がその企業や製品に対して感じる「らしさ」のことをいう。(中略)どのような顧客に対して、どのようなイメージを持ってもらいたいのかを考え、それを実現していく必要がある。(中略)ほとんどの顧客は、製品やイメージや、そのイメージに基づく信頼をベースに購入している。そして、そのイメージ作りに深く関わっているのがデザインである。

※「消費者」を「顧客」に置き換えて引用しています



■ポスト論理思考、ポストデザイン思考


ポスト論理思考として登場したデザイン思考。さらにそのポスト・デザイン思考の一つとして「アート思考」という考え方があります。『デザイン、アート、イノベーション』では、以下のように説明されています。


デザイン思考では、厄介な問題をいかにして創造的に解決するかが大事とされてきた。それに対して、アート思考では、いかにして人々の常識や価値観を揺さぶり、議論を巻き起こすような問いかけを行えるかが大事とされている。


ソリューションの陳腐化という話をしました。昨今話題となっている「パーパス」経営はまさに、顧客目線や差別化といった手法を超え、主体的にどういった問いを社会に投げかけるのかといった視点が重要になります。

起こり得る未来に対して、どのように自社「らしさ」を表現し行動していくかが問われていると言えるでしょう。
次回からは、より具体的に経営資産としてのブランド価値、そこに大きく関わる「デザイン」について見ていきたいと思います。



(*1)デザイン、アート、イノベーション 森永泰史著
(*2)経営学者が書いた デザインマネジメントの教科書 森永泰史著

[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブ・ディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。

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