2022.06.29

BtoB企業向け『強いブランドのつくり方』②
〜ブランドの“見た目”をマネジメントする

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター


■デザインは経営の武器になる。


社内に「自信」を与え、社外に「共感」を生む、デザイン経営。

あらゆる市場で技術の標準化が進み、機能面での差別化が難しくなる中、BtoB市場においても「ブランド」が重要ファクターとなりました。

当シリーズでは、どのようにして「強いブランド」を作り上げていくか、主に視覚的デザインの側面から解説していきます。経営者やマネージャーの方にとって「デザイン」の視点が広がり、ビジネス成功に向けた気づきをご提供できれば幸いです。

非デザイナーの方にとって「デザイン」の視点や、気づきをご提供できれば幸いです。

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■CI(コーポレート・アイデンティティ)の変遷

現在のように企業のマークやロゴタイプが計画的に管理されるようになったのは、今から50年ほど前に遡ります。今では名刺や封筒などの企業ツール、社屋のサインやユニフォーム、社用車にいたるまで、多くの企業がCI(コーポレートアイデンティティー)システムのもとでデザイン管理しています。

CI計画とマーク・ロゴ』によると、日本では60年代から企業のマークやロゴタイプの制作が活発になり、1980年代、ちょうどバブルの頃「CIブーム」が沸き起こりました。その頃からCIマニュアルが一般的になり、企業が発信するアウトプット全てにおいて視覚的デザインの統一が図られるようになります。


コーポレートブランドロゴの変遷(富士フィルムサイトより)

企業が、イメージアップの一環としてマークやロゴタイプをリ・デザインすることは以前から行われていた。しかし、企業の経営戦略の一手法として、CI計画という名のもとに、これほど大規模に行われるようになったのは、この数年*のことである。
*『CI計画とマーク・ロゴ』(1982年)

当時は、会社のマーク、ロゴタイプを時代に即してアップデートし、企業イメージのアップを図ることが第一義的だったかもしれません。しかし当時にも増して今、会社のアイデンティティを統合的に管理することがより重要になっているように思います。

顧客はマークなどの視覚要素や、製品などから得る体験を通してその企業を理解します。それらの要素、CI(コーポレート・アイデンティティー)がつかみにくいと、「企業」が認識しにくい事態となってしまいます。

現在では、グローバル化が進み競争が激化しています。技術力による差別化はさらに難しくなっています。また80年代に比べると飛躍的に様々な情報にアクセスできるようになりました。必要な情報、不必要な情報の仕分けすら難しい情報過多の時代に、企業像の軸をしっかり定めイメージの分散を避けなければ、その存在自体が薄まり顧客の記憶から消え去ってしまいます。


■見た目の一貫性は、「存在感」を高める

前回、ブランドは「イメージ」であるとお伝えしました。さらに言うと、ブランドは顧客の頭の中にあるイメージの集合体と言えます。では、そのイメージの集合体はどのように形づくられるのでしょうか。

良い行動からは良いイメージが生まれます。悪い行動からは悪いイメージが生まれます。美しいメッセージからも良いイメージが生まれます。見た目が良ければイメージも良くなります。しかしそこに嘘があれば良いイメージは瞬く間に悪いイメージへと変貌してしまいます。

そうした「イメージ」は、「顧客接点」から生み出されます。名刺やウェブサイト、展示会場など顧客との接点は色々ありますが、それらの顧客接点をどのくらいコントロールできているか?という前述のCIの観点が、ブランディングにおいても重要になります。

例えば、BtoB企業にとって展示会は重要な商談機会で、展示会場のデザインも力の入ったものになるでしょう。しかし、そこで配られる会社案内が、数年前に作成された古いものであったらどうでしょう?展示会場のイメージと会社案内とのイメージにギャップが生じ、その会社のイメージが分散しボヤけたものになってしまいます。最悪、印象が残らなくなってしまう可能性があります。

または、いざ商談の段になって使用する営業資料が、各営業マン手づくりのパワーポイント資料だったらどうでしょう?クオリティがまちまちだったりすることはないでしょうか?見た目が洗練されていれば「イメージ」も洗練されたものとして記憶されます。しかし、少しでも見た目の悪い部分があれば、全体の「イメージ」を引き下げてしまうことになります。

たかが「見た目」と思われるかもしれませんが、されど「見た目」、そこに一貫性がないと、総体的にブランドのパフォーマンスが下がってしまうのです。


■「営業」「採用」にも関与する、見た目の一貫性

BtoC企業では、顧客の目も肥えブランドの「見た目」はしっかりマネジメントされている場合が多く、組織的にブランド管理がなされています。一方、BtoB企業ではそこまでブランド管理がなされていないケースが多く見受けられます。これまで市場競争が激しくなかった業界であればあるほど、その傾向は強いように思います。

昨今では営業シーンだけでなく採用シーンにおいても、企業の「見た目」が重要になってきています。「見た目」を良くすればそれで良いという問題ではありませんが、優れた事業を展開している優良企業であるにも関わらず、その「見た目」で随分“損”をしている企業が少なからずあると思います。

そうした“損”をしている部分をブランディングのプロセスでは、視覚監査(ヴィジュアル・オーディット)という作業で明らかにしていきます。採用シーンであれば、学生目線でどのような表現がふさわしいか、しっかり企業の強みやビジョンが表現できているか、学生の目に触れるかもしれない全ての接点を洗い出しチェックをしていきます。

これまでBtoB企業の商談シーンでは対面的な折衝、費用や機能による選定、つまり担当者レベルで商談が成立することが多かったかもしれません。しかし昨今では、顧客企業のコンプライアンス、リスクヘッジ、サスティナビリティ対策など様々な観点で、複数部署、上層部の関与が増しています。そこでも「見た目」の一貫性が非常に重要になり、その精度が信頼感や信用の醸成につながります。

欧州・欧米では、以前よりBtoB企業においてもしっかりブランド管理がなされてきました。グローバル市場で戦うことが前提となった今、日本企業においても質の高いブランディングが必要になっています。

(*)『CI計画とマーク・ロゴ』 視覚デザイン研究所編

[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。

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