2023.07.09

BtoB企業向け『強いブランドのつくり方』 ⑥
〜組織的にブランドの一貫性を保つ

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター


■デザインは経営の武器になる。


社内に「自信」を与え、社外に「共感」を生む、デザイン経営。

あらゆる業界で技術の標準化が進み、機能面での差別化が難しくなる中、BtoB企業においても「ブランド」が重要ファクターとなりました。

当シリーズでは、どのようにして「強いブランド」を作り上げていくか、主に視覚的デザイン、クリエイティブの側面から解説していきます。経営者やマネージャーの方にとって「デザイン」の視点が広がり、ビジネスの成長に向けて気づきをご提供できれば幸いです。

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■ブランド選択のプロセス、想起集合(考慮集合)という考え方

一般的に、消費者が特定のブランドを選ぶプロセスとして想起集合(考慮集合)という理論がよく使われています。中でも、1990年にBrisouxとLarocheが発表した以下のフレームワークが特に引用されることが多く、簡単にその流れを説明します。

【1.知名段階】ブランドが選ばれるには、まず知られている必要がある
【2.処理段階】次に特定の製品属性で評価されるブランドであること
【3.考慮段階】さらに消費者が購買時に選択の候補として想起するブランドであること
【4.選考段階】想起集合の中でも第一想起ブランド(真っ先に思い浮かぶブランド)であること

「想起集合」とは、ブランドについての特徴が理解され、情報が処理された上で肯定的な態度が形成され、消費者が購買時に選択の候補として想起するブランド群です。
特にマーケティングにおいては「想起集合」に入ることが求められ、その中でも特に第一想起ブランドであることは顧客の判断に有利に働きます

Japan Marketing Academy Vol.31 No.3(2012)P58〜72
「考慮集合形成メカニズムと意思決定ルール」浦野 寛子
※PDFファイルがダウンロードされます

BtoBブランディングにおいては、BtoCブランドのように一般的な認知が高くない場合も多く、初期の「知名段階」も非常に重要になります。


■強いブランドには、強いビジュアル・アイデンティティ(V.I.)が不可欠

それでは、どのように認知度を高めていくか。もちろん広告や広報を通して露出を高めていく必要がありますが、その前に強いビジュアル・アイデンティティ(V.I.)を持っていないと、一つひとつの露出がブランド認知として蓄積されず、いくら予算をかけてプロモーション活動を行っても、ザルに水を入れるような状態になってしまいます。まず、認知度推進力を高めるための下地をしっかり作っておく必要があります。

実際、そうした状況にある企業は少なくありません。どの広告を見てもブランド表現に一貫性がない。企業ロゴの表示の仕方がバラバラ。イベントごとにメッセージが違うなど、表現にバラつきがあると、顧客が2回、3回とそのブランドと接点があったにも関わらず、記憶されない、ブランドイメージが蓄積されないといった結果になり、先に述べた「非知名集合」からいつまでも抜け出せないという状況に陥ってしまいます。


■現状の棚卸しから「あるべき姿」を導き出す

上記のようにブランドのアウトプットに統一感がない場合、まず現状を棚卸しし、課題のあぶり出しを行っていきます。
具体的には企業から出されるすべてのアウトプット、企業ツールや製品自体のデザイン、パッケージ、印刷物、広告、社屋のサインや社用車、または採用ツールなど、俯瞰して視覚的なチェックを行っていきます。統一できている部分、統一できていない部分を確認し、あらゆる顧客接点において、視覚的にどのような制度設計が必要かを検討します

統一できていない原因も様々です。そもそも統一する土壌(意識)がない。ガイドラインがない。各部署の裁量で勝手に広告やPRツールが作成されているなど。
こうした運用上の課題を解決するには、部署を横断して課題意識を共有し解決策を講じていく必要があります。必要に応じて運用体制を新たに立ち上げることもあります。


ブランド表現に一貫性を与えることは、認知を高めていく上での基礎となり、競争力高めていく、顧客との信頼を築いていくといった、ブランド価値の向上において不可欠です。
改めて、現状のブランドのアウトプットをチェックし、「あるべき姿」を見直すことで、ブランディングをより効果的に推進していくことができます。

[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。

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