2023.10.26

BtoB企業向け『強いブランドのつくり方』⑧
〜インナーブランディングで高めるブランド価値

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター


■デザインは経営の武器になる。


社内に「自信」を与え、社外に「共感」を生む、デザイン経営。

あらゆる業界で技術の標準化が進み、機能面での差別化が難しくなる中、BtoB企業においても「ブランド」が重要ファクターとなりました。

当シリーズでは、どのようにして「強いブランド」を作り上げていくか、主に視覚的デザイン、クリエイティブの側面から解説していきます。経営者やマネージャーの方にとって「デザイン」の視点が広がり、ビジネスの成長に向けて気づきをご提供できれば幸いです。

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■社員一人ひとりの「行動」が、ブランド価値を高めていく

前回は、ブランドの「らしさ」をいかに生み出していくか、重要になる5つの要素をお伝えしました。
そして、その「らしさ」や「ありたい姿」を実現するには、社員一人ひとりが目標に向かってベクトルを揃え、具体的に行動する必要があります。

今回は、社内をまとめていく上で必要になる「インナーブランディング」のポイントについて見ていきたいと思います。
社内で取り組む際のヒントにしていただければ幸いです。


■社員全員の関与度を高める

新しくブランドの「ミッション・ビジョン・バリュー」や「パーパス」を定めたり、あるいは、改めてブランドの「ありたい姿」を設定した場合など、まず社内で共有がなされます。

しかし、一度きりの社内発表で終わらせたり、一部の部署でしか意識されず形骸化してしまったり、そもそも社内・社員にとって「自分ゴト化」されていないといったケースは少なくありません。

それでは「ありたい姿」は単なる絵に描いた餅のままで、実現されることはないでしょう。

「ありたい姿」の実現に向けて、社員一人ひとりがその目標を「自分ゴト化」している必要があります。そこでまず大切なのが「ありたい姿」に共感していることになります。そこから「目指そう」という気持ちが芽生え、現状の姿と「ありたい姿」とのギャップに気づきます。そして、それを埋めようとする行動が「自分ゴト化」ということになります。

そうしたプロセスが、一度きりの発表で達成されるはずがありません。


■コミュニケーションの「頻度」が鍵となる

吟味に吟味を重ね、よく練られた「ミッション・ビジョン・バリュー」や「パーパス」であっても、理解はされても受け入れられるとは限りません。
人心をまとめるには、たくさんの人と会話することが大切です。ここは仕組み化する前に、やはり時間と労力が必要になります。

インナーブランディングを行う際は、まず社内でどれくらい理解されているか、共感を得れているか、社内アンケートやグループインタビューを通して、「浸透」の度合いを把握します。

ここで必ずと言っていいほど、世代間ギャップ、部署間ギャップといった、「浸透度」の差が発見できます。そこに潜んでいる原因を紐解いていくことで、「自分ゴト化」に向けた道筋が見えてきます。

次に、ワークショップや勉強会を通して、理解浸透や自分ゴト化の推進を図っていきます。
あの手この手で理解を求めていくことではじめて、社員に「気づき」が生まれてきます。そこから「ありたい姿」を目指す具体的な行動を引き出し、その行動に対してフィードバックをする、各自の行動を全社で共有することでまた新しい「気づき」が生まれます。

そうしたサイクルを何周も回すことで、企業文化として定着していきます。


■インナーブランディングは何をもたらしてくれるか?

ブランドの「らしさ」や「ありたい姿」を実現するには、こうして社員一人ひとりのベクトルを揃えていくことが不可欠です。
では、そうしたインナーブランディングによってどうした効果が期待できるでしょうか。そこから生み出される効果を3つにまとめました。

1. 社員とのエンゲージメントが高まる
「ありたい姿」を自分ゴト化することで自ずと、会社と社員とのエンゲージメントが高まります。そこからリーダーシップが生まれ、またギャップを埋めるために様々なアイデアが生まれます。
これはブランドを強くしていく上で、大きな活力となります。

2. ブランドの一貫性が確保できる
当シリーズ6回目「見た目の一貫性を高める」でご説明した通り、強いブランドを作る上で「見た目の一貫性」は、認知を高める、信頼性を高める、ひいては競争力を高める上で欠かせません。
しかしそれ以上に「製品開発」を行う際のポリシーや、企業の根幹となる社員一人ひとりの「行動」の一貫性が重要になります。インナーブランディングは、これらの一貫性を生み出す「道しるべ」となります。

3. 組織文化と社員の価値観を強化する
インナーブランディングを継続的に行うことで、社員一人ひとりがブランドを大切にしようという意識が強まり、よりよくしようとするアイデアが多数生まれます。そうした価値感が組織文化として定着すると、より長期的な視点でブランディングを行うこととなり、ブランドの持続可能性が高まります。そして顧客にとっての便益、株主などを含めた社会にとっての価値を高めることに繋がっていきます。

強いブランドをつくるには、社員一人ひとりの力が欠かせません。「ブランディング」というと、派手なプロモーションで認知度の向上を図ったり、デザイン性を高めてイメージアップを狙うなど、つい外向きな手法論をイメージしがちですが、まずは社内に目を向け、内向きに取り組むことが大切ではないでしょうか。

[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。

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