2023.05.31

BtoB企業向け『強いブランドのつくり方』 ⑤
〜ブランドのシンボルをデザインする

川内 祥克 株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター


■デザインは経営の武器になる。


社内に「自信」を与え、社外に「共感」を生む、デザイン経営。

あらゆる業界で技術の標準化が進み、機能面での差別化が難しくなる中、BtoB企業においても「ブランド」が重要ファクターとなりました。

当シリーズでは、どのようにして「強いブランド」を作り上げていくか、主に視覚的デザイン、クリエイティブの側面から解説していきます。経営者やマネージャーの方にとって「デザイン」の視点が広がり、ビジネスの成長に向けて気づきをご提供できれば幸いです。

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■ブランドのコアとなる「ネーミング」と「デザイン」

企業ブランド、事業ブランド、商品ブランド、サービスブランド、いずれのブランディングにおいても、ネーミングとそのデザインは極めて重要な要素です。それらはアイデンティティを明確にし、顧客に効果的にメッセージを伝える役割を果たします。特に競争の激しい市場では、より一層重要度が増します。

事業の成長において、商品やサービスを磨き上げると同時に、強力にブランドがデザインされていなければ差別化を実現することはできません。最悪のケースでは、比較検討の候補にすら挙がらず、推奨ブランドにもなれないというリスクが生まれます。顧客に選ばれるためには、ブランドを象徴する「ネーミング」や「デザイン」を強化することは不可欠です。

考慮集合・想起集合

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■印象に残るネーミング

新しいネーミングを考える際は、まず市場や競合を確認し、差別性を考慮する必要があります。他社との差異を明確にし、個性を追求することでオリジナリティを高めることが重要です。

商品やサービスの特徴を伝えようとして、一般的な言葉をそのままネーミングにしてしまうケースは、意外と多く見受けられます。
例えば、「熱に強い新繊維素材」を「ストロング・マテリアル」とネーミングするような、そうしたネーミングはわかりやすい反面、独自性を欠き、記憶に残りにくくなります。

例えば、「Google」は、数学者エドワード・カスナーの甥が10の100乗を「Googol(グーゴル)」と造語したものが元になっているそうです。ネーミングとして個性があり一度聞いたら忘れない、意味的にも膨大な量のデータを扱う事業ドメインの意味が込められています。また、音感もよく視覚的にもリズムがあり、魅力的なネーミングと言えます。

ちなみに、「Google」は「Googol」のスペルミスから生まれたという逸話がありますが、日本人にはグーゴルよりグーグルの方が呼びやすくて良かったかもしれませんね。

google, googol


■シンボルマーク、ロゴは、どういったデザインが良いのか?

シンボルマークやロゴデザインは、ブランドの象徴として極めて重要です。それらはあらゆる顧客接点で繰り返し使用され、ブランドの一貫性を保ち、品質を保証する印にもなります。

そのデザインの精度が低ければ、信頼性に対するイメージを損ねてしまう可能性さえあります。特にBtoB事業では、プロフェッショナリズムを伝えるために、精緻なデザインが不可欠です。

では、どのようなデザインが機能的なのでしょうか?ブランドのコンセプトや事業ドメインによりますが、一般的な傾向として、シンボルマークやロゴデザインはよりシンプルにデザインされる傾向にあります。

時代が進み、より洗練された表現が求められているという考え方もできますし、競合他社が増えて情報が溢れている現代では、シンプルなデザインでなければ記憶されにくいという状況もあると思います。また、デジタルメディアに最適化するために過剰なデザイン要素が削ぎ落とされたと見ることもできます。


■「タグライン」でブランドコンセプトを伝える

そのブランドを一言で言い表すなら?

ミッション・ビジョン・バリューといったブランドコンセプトは、タグラインという形で伝えることができます。
誰もがご存知のタグラインはNikeの「Just do it!」でしょう。BtoB企業でもブランドロゴとタグラインを合わせて開発することは少なくありません。
大成建設の「地図に残る仕事」はご存じの方も多いと思います。

どういったメッセージにするか、それはブランドのステージによります。新たに立ち上げるサービスブランド、新規市場に参入する事業ブランドであれば、まず何者であるか事業ドメインを説明するようなタグラインがいいでしょう。
または、市場で十分に認知がある企業ブランドであれば、もう少し企業理念、ミッションやパーパスに近いタグラインで、企業姿勢を伝えることの方が多いでしょう。

そして、タグラインは社外に向けてだけでなく、社内に向けても有効なコミュニケーション・ツールになります。
例えば名刺や封筒、紙袋に記載することで、社員は常に目にし、意識することができます。そこからインナーブランディングに広げていくことが可能です。

今回は、ネーミングとシンボルマーク・ロゴデザイン、そしてタグラインについて見てきました。ブランドを表現するツールとしては最も小さな単位ですが、長く使っていくもの、繰り返し使っていくものです。だからこそ企業の姿勢を込め、妥協のない精度で仕上げられなければなりません。

これらのブランドの「シンボル」は、社員一人ひとりが掲げる「旗印」でもあります。ネーミング、デザイン、メッセージ、それぞれの役割りを最大限に発揮させ、丹念に仕上げることでより強いブランドの礎となります。

[筆者プロフィール]

川内 祥克

株式会社TCD 取締役副社長 クリエイティブディレクター

企業ブランド、事業ブランドやサービス・ブランドの立ち上げ、プロモーション業務に従事。『ブランドのウェブ活用』などのセミナーも開催。

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